GANYMEDES
かつて人の世は、極点に至るまで文明を築き上げた。
天を衝く塔は空を裂き、大地を覆う機構は星々の秩序にすら干渉せんとした。されど、その栄華はあまりに昂ぶり、ついには自壊の火に呑まれた。
文明は滅び、人類は衰微し、支配者の座より逐われた。
残されたのは廃墟と遺骸、そして風化を待つ記憶のみである。
斯くして世界は、神話の時代へと還元された。
久しく忘却されていた神々が再び大地に歩みを刻み、人の築きし都市や機械は、いまや神の殿堂や神器として仰がれる。技術は神秘へと転じ、鉄の獣は神の眷属となりて荒野を徘徊する。
人の子らは数を減じ、森や地底の洞に潜みて生を繋ぐ。
ある者は祭祀者となり神に仕え、ある者は古の記録を秘蔵し、失われた術を呼び戻そうと企んだ。
衰退の中にありながらも、彼らはなおも抗い、また渇望する。
神々の威に畏れを抱きつつ、その力を求めざるを得ないのだ。
地上に降臨せし神々は、天と地を階に分かち、威を競う。
日輪を抱く神、雷霆を振るう神、死を統べる冥府の神 ───。彼らは相和すことなく、その衝突は大地を震わせ、人を巻き込み、しばしば劫火を呼ぶ。なかでも至高の座を占める神は、王統すら軽々にその御前に参ずるを許されぬ。神秘と威厳とを身に纏い、その影には鹿や狼の巨影が幻夢のごとく寄り添う。
往時の文明はすでに伝説と化し、その残滓は呪文や神名として祈りに刻まれる。
やがて空には黒き月が昇り、光と影の秩序を定める標となった。人はその下において、神に仕え、あるいは神に背きながら、滅びの果てに新たな物語を紡ぐ。
人の文明の終焉は、すなわち新たなる神話の開幕にほかならぬ。
果たして人が神を生みしのか、神が人を残し給うたのか
─── その答えを知る者は、もはやこの世にはいない。

トワ・アルコル・アマルガム
170cm / 22歳
暁金の鹿神に仕える人間の男。隻脚の剣士。艶やかな褐色の肌に赤銅色の瞳をしている。
主人の影のように寄り添い守護する「影剣(えいけん)」として身を捧げている。かつてその務めから逃れようと忠誠に叛いた際に主人手ずから左足を斬られ隻脚となった。
露出の多い服は主人が誂えた。夜伽の際の観賞用の役割も持つ。
一見は田舎出身の素朴な青年で、特筆するような秀でた点も無いように映る。そのため、侮られがちであり、並外れたそのすすどい眼差しに気付く者は少ない。神の恩寵で特別に飼われる男として「鹿陰(ろくいん)の犬」と揶揄される。
鹿神を艶殺するほどの特殊な色香を持ち、暗殺の術として色仕掛けを得意とする。
鹿神を「大鹿様」と呼び、日頃は表向きは真面目な近衛を務める。鹿神の命により策動するのは夜が更ける頃、人知れず闇に紛れる。主に要人を狙う。
性格は些か神経質。人前で笑うことは少なく、素直ではない。鹿神の貪婪な愛情を煩わしく思いながらも、絆されそうになる自分に戸惑っている。

アヴィゲイリス・エルカネス
270cm(角を含めた身長)/ 外見年齢30代半ば
「暁金の鹿神(ぎょうきんのろくしん)」の異名を持つ半神。大国の神域に鎮座する。頭部に大きな枝角を生やしており、その形状が鹿に似ていることから「大鹿様」と呼ばれている。
この角の成長は季節の移ろいと共にあり、角が大きくなるほどに人を超越し、神域の知覚を得る。これを「神化」という。神化を終えた鹿神が落角をすると春が訪れると言われている。
神域の知覚は天眼通にすら近い洞察力を齎すが、同時に間近にある人の心には疎くなり冷徹と思われることも多い。普段は神として大社(おおやしろ)に祀られており、常人はおろか、尊き王族といえども容易には謁見を賜らない。
性格はやや高飛車なところがあり、人間を下等と扱う節がある。のらりくらりとしつつも抜け目のない洞察をする。また、ある程度の深度までは心を読めるため嘘が通じない。
数年ほど前からある男を近衛として側に置いており、随分と執心している。
社でまことしやかに囁かれる噂によれば男の色香に中てられ大鹿は堕落しているらしい。